*人形というのは、いろいろな分野が総合されたアートです。人の形を作る彫刻の部分、衣装、布、などを含めた工芸の部分、、など、。
私は昔から手作りが好きで、革細工、彫金、染織も皆、少しずつ齧りました。(染めの方は仕事として手描き友禅に携わりましたが、)でも、飽きやすい性格で、全部しっかりとマスターしたわけではなくて中途半端、、どれも深く長くは続きませんでした。絵を描くことも子供の頃から好きで、特に人物画は得意な方でしたし、人を眺めて観察するのもけっこう好きでした。そんな要素が全部繋がっていって、今の人形を作ることになったのかな、と思います。忍耐が無いので、小さいという事もとっつきやすかったのかもしれません。
*可愛らしい”お人形”というものには、まったく興味は無かったのですが、、、きっかけは子供達への手人形を作ったことからです。最初はきつねや猫の頭だけ粘土で作って余布をからだにした簡単なものでした。そのうち欲が出て、人の形を作りたいと思うようになり、日本に帰国した際に人形教室を覗かせてもらったり、作り方の本を見たり、と材料も何もかも試行錯誤しながらやってきました。
*創作のインスピレーションは若い頃、アジアの旅先で見た素朴に生きる人々の姿や、祈りの対象ーヒンズーの神様や、仏像や、マリア様や、長い間、人々に祈りを捧げられそこに佇んでいる像などです。作られたときは、ただのヒトのカタチだったものが、人々の祈りのエネルギーで、そのもの自体が癒しのエネルギーを発するようになったヒトのカタチに惹かれます。
*古い布、手間ひまかけて織られ染められた手の温もりのある布に惹かれます。それは作られる過程、そして、使われている長い時間に関わった人達の想いが強く残っているのだと思います。私の人形の衣装にも出来るだけ、そんな布端を使います。アジアやあちこちの美しい布を集めていた友人達が、その貴重な布のハギレを私に送ってくれたり、小さな布端がたくさん手元に集まってきました。小さい布を眺めながら、どんな所でどんな人によって織られたのだろう、想いを巡らせ、写真や映像でみた未知の国で暮らす人々の姿を重ね、イメージを膨らませます。
異国の布に加えて、もちろん日本の布も美しい物がたくさんあります。日本に行った際に古い着物のハギレや、簪小物なども集めています。
それらは、古びてすりきれて穴があったり、半分壊れていたり、、それをいろいろ組み合わせて使うことがとても面白いのです。一見、もう使い古されてゴミになってしまうようなものも、組み合わせ次第で、美しいものに生まれ変わります。その遊びが私にはとてもわくわくするプロセスなのです。
私の人形は無国籍です。日本の着物地にメオ族の布の一部が縫い付けてあったり、こちらのガラクタ市でみつけたレースの一部を縫い付けたり、、私の想像の世界に住む人達です。
*今までドイツの人形展に出品する以外は、ほとんど自分で場所を借りて展示会のオーガナイズをしてきました。展示期間中はほとんど、人にまかせないで、会場にいます。普段あまり人に会わずに家で作業をしているので、来て下さった方と直接お話するのがとても楽しいのです。
*最近は自分の人形作品だけではなく、他の分野、絵やテキスタイルなどのアーティストと一緒に展示を企画しています。数年前、人形をテーマにスイス人の舞踏家の友人とのコラボで、展示会で音楽とパフォーマンスのイベントを催しました。そのとき彼女のためにマスクを作ったり、その舞台用のタペストリーなどを作ったりと、人形以外の物作りも始め、その面白さを体験したのがきっかけです。
そして、今までの展示会を通して知り合った人達の中に、日本の文化に深く影響されているスイス人作家が何人かいて一緒に展示をやろう!ということになり、3年前、ベルン大使館の文化センターで、陶芸、水墨画、テキスタイルなどのアーティスト8人を集めて、グループ展(結展)を企画開催しました。準備が大変でしたが、とても良い体験でした。機会があれば、何かまた面白いコラボ企画もしてみたいと思ったりしています。
2015年秋