ドイツーNeustadt bei Coburugの人形祭

Doll Forum Japan vol 42. 2004に 掲載

 

ーチューリンゲンの森は、世界の人形達のふるさとだ。そして、クリスマスの夜、天使が持ってきてくれる素晴らしい贈り物がたくさん詰まっている大きなおもちゃ箱である。ー
ーオーガストトリウス 岸壁から海へ より (1883年)

チューリンゲンの森はドイツの中東部、ニュールンベルグから北へ約100キロほどの所に位置する。そのあたりの人形産業の中心の町がノイシュタット(バイコーブルグ)、ゾンネベルグである。この地域の農家の冬期の手内職は、素朴な人形作りであった。それが家内工業化して、次第に型抜き屋、目玉屋、顔描き屋、間接の接続屋、洋服屋、靴屋、鬘屋、などの専門職に分業化していった。19世紀後半には人々の購買欲も向上し、工場による量産化で国内だけではなく海外への輸出も増えていく。しかし、その後の第一次世界大戦、経済恐慌と、時代の波にのまれていき、その繁栄も徐徐に衰退への道をたどっていった。そしてついには、第二次世界大戦後のドイツの東西分割で、その境界線がちょうどノイシュタットとゾンネンベルグの真ん中に引かれることになる。(ノイシュタットは西独バイエルン州、ゾンネンベルグは東独チューリンゲン州)40年余にわたって、鉄条網が二重、三重に張り巡らされ、その間には地雷が埋め込まれていたという。
1991年、東西ドイツが再統一された数年後、傷付いた人々の心を癒し、共にこの地の玩具産業を復興させたいという地元の人々の願いを込めて、この人形祭は始まった。フェスティバルは毎年春のAuffahrt(キリスト教の聖日で木曜日)のある週に催され、この期間、ドイツ玩具工業博物館での特別テーマによるフィギュアアート展、Max Oscar Arnold(MOA)人形コンクール、アンティークドール展、テディベア展、人形に関するありとあらゆる物の展示即売会が町のあちこちで開かれ、木曜日は町の広場でのアンティーク市があり、この地方ならではの人形関係の珍しい古い物が出回る。(古物好きの私としては、大興奮の市である。)木曜日の休日から週末まで4日間の休みを取って来る人も多く、普段はとても静かな田舎の小さな町があちこちからの人形ファンで賑わう。

Max-Oscar-Arnold-Kunstpreisewettbewerb (MOA)
その中の催しの一つに、Max Oscar Arnold アートドール公募展がある。Max Oscar Arnold は、有能で革新的な人形の作り手であり、19世紀末、ノイシュタットの人形産業を大きく発展させた実業家でもあったこの町の名誉市民である。この賞はその彼のエスプリを受け継いだ現代のドールアーティストへ贈られる。

カテゴリーは13に分かれ、(子供、大人、ファンタジー人形、実験的な人形など、)その中の最高の賞、ライフワーク賞(作家のすべての作品に与えられる)が、今年(2004年)はパリ在住の大島和代さんへ贈られた。会場の中央には彼女の作品ーくるみの赤ちゃん達、制作途中のフリーダカーロの頭部、とこれまでの作品の写真が展示され、その繊細で素晴らしい作品にたくさんの人の感嘆の声が聞こえた。この賞の今までの受賞者には、リサ.リヒテンフェルス、エイザベス.フリューラー.トマミハエル、ヒルデガルド.ウェグナー、シルビア.バンケなどがいる。エクスペリメントドール賞にはクロアチアのニベス.チチン.シャイン、そして、大人の人形のカテゴリーに参加した私も賞をいただいた。Max Oscar Arnold生誕150年にあたる今年は、他の受賞者に韓国人、ロシア人も加わって、インターナショナルな顔ぶれになった。

このMOA展示会場の隣の部屋では、最近の創作人形の売れ行き不振を憂慮して、新しいコレクターへのアピールを目的に、すでに名の知られている作家達が集まったヨーロッパドールアート連盟展も開かれていた。

 

Museum der Deutschen Spielzeugindustrie ( ドイツ玩具産業博物館)
特別テーマ展 2004年 ”Oben und Unten”ー上と下
この町のドイツ玩具産業博物館で毎年この人形祭に併せて、特別テーマによるフィギュア.アート展が開かれる。今年のテーマは、”上と下” いろいろな作家がどんな風にそのテーマをイメージして形にするかは、とても興味深い。文字通り、”上にいる人、下にいる人”、または、対照する物として捉えた”黒と白”、”昼と夜”、”天使と悪魔”、そしてその両面を持つものなど、多様な意味づけがされた。輪に付けられた人形がくるくる廻り、上になったり、下になったり、美徳と悪徳というタイトルの女は白いドレスの淑女になったり、黒いドレスの悪女にも変身する。27人の招待作家がそれぞれに独創的なアイデアでそれぞれの”上と下”を表現した。私も今回初めて、2体の作品を出品させていただいた。この展示会は8月下旬まで続く。

私は展示準備のため、フェスティバルの始まる3日前から行ったのだが、いろいろな催しの合間に汽車で5分ほどの隣町、ゾンネンベルグや、20分ほどのコブルグへ出かけた。ゾンネンベルグにはドイツで最古の玩具博物館があり、この町でもフェスティバルの間、毎日、エルフルトやベルリンからの人形劇団の公演が行われていた。コブルグはこの地方の中心の町で、中世のヨーロッパの王室の歴史に深く関わりのある古い城のある美しい町だ。フェスティバルに協賛している幾つかの工場ー人形に関する材料(ガラスの目など)、やクリスマスの飾りなどーはこの期間一般客にも公開されていて、制作現場の見学や、特別価格でのセールなどの特典もある。私達はガラス工場で小さめのグラスアイを幾つか卸値で買った。

あとがき
大島さんはパリから汽車で11時間、私はスイスから9時間、ニベスさんはクロアチアから長距離バスで20時間、とそれぞれ遠距離から、この小さな町ノイシュタットに集まり、同じペンションに滞在したので、一緒にとても楽しい時間を過ごせました。そして、たくさんの人形を見て、この土地の歴史、風土にも触れる事が出来、いろいろな面で大いに刺激された素晴らしい1週間でした。私にこのフェスティバルへの参加を勧めてくれたエリザベスに心から感謝しています。

PuppenFestival 2004 + 2005 Blog
過去のブログから人形祭についての記事の抜粋
Puppenfestival-Blog.pdf
PDFファイル 1.2 MB

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